エレベーターパニック。

20070208 up




週の真ん中。時間は22時を過ぎた頃。
スーツ姿の男が2人、エレベーターに乗り込んだ。他の乗員はいない。
2人はやたらとトラブルの多かった商談がまとまり、無事帰宅するところだ。


1人は銀髪の男。
黒地に白ストライプのスーツをワイシャツ、ノーネクタイで着こなしている。
更にレンズの小さい銀フレームの眼鏡をしている。

もう1人は黒髪の男。
紺色のスーツに白×濃紺チェックのワイシャツを着て、青が鮮やかなネクタイをしている。
そしてレンズが長方形の黒フレームの眼鏡をしている。


2人は同じ部署の先輩と後輩だ。


銀髪の男はその会社に勤めて8年になる。

黒髪の男はその会社に勤めて3年になる。




とりあえず、商談が上手くまとまって良かったな。お前も大変だったろ。
いえ、先輩がいてくれて助かりました。さすがですね。
金曜だったら飲みに行ってるんだけどな。そーいやお前、一人暮らしだっけ。
ここから地下鉄で5駅なんです。今度来て下さい。
お前んち近いなー。オレ3回も乗り換えんの。今度終電逃したらお前んち行かせてよ。




たわいもない話をしながら黒髪の男は 15…14…13…と
エレベーターが着々と降りていくのを見ていた。




途端




ガタンッ  ゴウンゴウン…




エレベーターが弾み、止まった。 真っ暗になった。




嘘だろ…



呆気にとられる2人。




キュィィ…ン…




薄く音が鳴り、予備電源が作動したらしい。薄暗い照明がついた。
銀髪の男は非常ボタンを押すが、反応は無い。
2度3度繰り返し押しても無駄だった。
黒髪の男は携帯電話を取り出してみたが、電波は1本も立っていない。
銀髪の男も携帯電話を見たが、結果は同じだった。




銀髪の男は天井を見上げ少し考えた。




しょうがない。お前、オレの踏み台になれ。四つん這いになれ。
えー! 何でですか!
…じゃあお前、先輩のオレの上乗る?
……いえ、ボクが踏み台なります。




2人は上着を脱ぎ、黒髪の男は四つん這いになった。
銀髪の男はその上に乗った。




上見るなよ!
先輩スカートじゃないじゃないですか…。
お約束だろー?
別に男の見ても面白くないですよ。…何かあります?
んー真っ暗。上に行けそうもない。
そうですか…。




2人はため息をつき、諦めて腰を降ろした。



…なぁ、止まってからどれくらい経つ?
…15分くらいです。
いつ動くかわかる?
…わかんないです。









10分程沈黙があった。











黒髪の男は回復の目処の立たないエレベーターに
疲れが増し、壁に寄りかかり目を閉じた。
黒髪の男が睡魔に襲われウトウトしかけた時、目の前が暗くなるのを感じた。
銀髪の男が黒髪の男に覆い被ってきたのだ。
銀髪の男は黒髪の男に口付けた。





カシッ




眼鏡と眼鏡が当たる音と濡れた音が狭い個室で響いた。
銀髪の男は黒髪の男の唇を深く味わう。
黒髪の男は自由と酸素を奪われ窒息するかと思った頃に解放された。息が荒い。




…先輩、何してるんですか。
黒髪の男はまだ肩で息をしている。目の前の顔を半ば睨みながら。

オレ、お前の事好きなんだ。
…冗談よして下さい。
冗談じゃないよ。お前と2人きりになるのを避けてたのに、これじゃ耐えられない。
お前、視力悪いんだろ? 好きな女にシテもらってるとでも思えよ。




黒髪の男は目の前の男が銀髪の男らしくないと思った。
銀髪の男はいつも冗談なのか本当なのかわからない事を言い、表情も読めない。
3年の付き合いをもってしても掴めない男だ。
新人の頃は冗談を真に受けてよく笑われたものだ。


しかし、黒髪の男は目の前の男の声から
嘘ではない切実さを
行き場のない熱を
やりきれない想いを感じ、
目から諦めに近い色を見た様に思った。
銀髪の男は自分が被害者の様な表情をしていた。




黒髪の男は目の前の男に同情に似た共感をしてしまった。
更に先程の口付けが嫌ではなかった事に驚いていた。

銀髪の男は眼鏡を外し、黒髪の男のネクタイを緩めシャツのボタンを外した。
黒髪の男の肌に銀髪の男の指が這う。
黒髪の男は今までにない感覚に戸惑った。
なにより銀髪の男が自分の肌に触れる事に興奮し、それに困惑した。

耳、首筋、胸、腹、腕と銀髪の男はマーキングするかの様に口を付け、
舐めては噛み吸っては舐めた。その度に黒髪の男は弾み、鳴いた。
銀髪の男は器用に黒髪の男のベルトを外し、下着の中に手を入れる。
黒髪の男のペニスはすでに立ち上がりつつあった。
銀髪の男はペニスを何度か指で擦り上げ、口に含んだ。
黒髪の男は一層高い声で喘いだ。




カシャン




黒髪の男の眼鏡がずれて落ちた。


2人はかまわず行為を続ける。


銀髪の男は空いている指を黒髪の男の穴に入れた。
黒髪の男はあまりの苦しさに涙が出た。
銀髪の男は指を出そうとしては奥まで突き、かき回し、徐々に本数を増やす。



難なく指が入る様になり銀髪の男は自分のベルトを外し、下着を降ろした。
黒髪の男の穴にペニスを挿入した。
黒髪の男は一瞬息が詰まった。
いくら指で慣らしたとはいえ明らかに質量が違う。
銀髪の男は黒髪の男の前立腺の裏を探る。
次第に黒髪の男は恍惚とした表情を見せる。


2人とも頂点はそう遠くない。


銀髪の男は激しく腰を動かした。
黒髪の男もそれに合わせて腰を振る。






2人は果てた。




2人は息遣い荒いまま無言で後処理をした。
銀髪の男は黒髪の男のシャツのボタンを止め、ネクタイを締めてやった。




…パパッ  ゴウンゴウン  ウィィィ…ン




それを見届けるかの様にエレベーターの照明が付き、動き出した。

時間は24時を過ぎた頃。

2人は立ち上がった。




先に沈黙を破ったのは黒髪の男だった。




…先輩、とりあえずウチ来ますか。
え、お前怒ってないの?
少し怒ってますけど…先輩を見捨てて帰れないですし。
……それにボク、あんまり…嫌じゃなかったんで。
え…おま、それどーいう…?





エレベーターが到着した。
黒髪の男は先を歩いた。




先輩をそーゆー風に見た事無いからわからないですけど。
オレ、良い方に考えちゃうよ?
…それでも良いです。













銀髪の男は目を見開いた。
















→お話を考えている時に珍しく背景が浮かんでて、
ヤマトさんのシャツとネクタイを表したつもりです。
「眼鏡と眼鏡が当たる」というのを描きたかったんですが、
いつの間にか余裕の無い先輩も…。
銀髪のビジネスマンなんていないんですけどねぇ。
タイトルで私のネーミングセンスが無いとわかります。